カンアオイ属掲載種一覧(五十音順)
ミヤコアオイ A. asperum var. asperum
カンアオイ属の概要
林床に生える多年草。
北半球に約127種があり、東アジアに分布するものが多い。
日本には約58種が分布し、本属の多様性の中心地となっている。
日本産カンアオイ属一覧
Sinn et al. (2015)1)によると、カンアオイ属は3亜属6節に分けられ、日本にはそのうち2亜属3節がある。
本稿の種の学名、およびカンアオイ節内の分類は主にOkuyama et al. (2020)2)による。また、種群の和名は同論文の日本語解説ページ3)による。分布を含め、大橋ら(2015)4)、Yamaji et al. (2007)5)も参考にした。
なお、ノマダケカンアオイは詳細不明のため除外してある。
各表内の種の配列は大まかな分布順(北東から南西へ)。
※既知種のみの一覧です。多くの未記載種・正体不明の個体群が各地にあることをご承知おきください。
※分布には抜け漏れがあるかもしれません。
タカサゴサイシン亜属 Subg. Geotaenium
タカサゴサイシン節 Sect. Geotaenium
中国および台湾に3種あり、日本には分布しない。
フタバアオイ亜属 Subg. Asarum
フタバアオイ節 Sect. Asarum
北半球に17種あり、日本にはそのうち2種が分布する。
和名 | 学名 | 国内分布 |
---|---|---|
フタバアオイ | A. caulescens | 本州~九州 |
オナガサイシン | A. caudigerum | 沖縄島 |
カンアオイ亜属 Subg. Heterotropa
次の4節に分類される。
1.ウスバサイシン節 Sect. Asiasarum
東アジアに9種あり、日本にはそのうち7種が分布する。
和名 | 学名 | 国内分布 |
---|---|---|
オクエゾサイシン | A. heterotropoides | 北海道、東北 |
トウゴクサイシン | A. tohokuense | 東北、中部地方北部、関東東部、佐渡島 |
ミクニサイシン | A. mikuniense | 群馬・栃木・長野・新潟県境付近 |
ウスバサイシン | A. sieboldii | 中部、関東南部~中国、佐渡島、対馬 |
イズモサイシン | A. maruyamae | 島根県 |
クロフネサイシン | A. dimidiatum | 奈良、広島、四国、九州 |
アソサイシン | A. misandrum | 九州(阿蘇山地) |
2.カンアオイ節 Sect. Heterotropa
日本、中国、台湾に62種があり、日本にはそのうち49種が分布する。
Okuyama et al. (2020)によれば、本節の中で最も古く分化した種はトコウA. forbesiiという中国産の種で、次の9群と姉妹群を形成するという。
(1)Asarum ichangense
中国の1種のみよりなる。
(2)沖縄-台湾種群
琉球列島および台湾に12種があり、日本にはうち6種が分布する。
和名 | 学名 | 国内分布 |
---|---|---|
ヒナカンアオイ | A. okinawense | 沖縄島嘉津宇岳周辺 |
センカクアオイ | A. senkakuinsulare | 魚釣島 |
オモロカンアオイ | A. dissitum | 石垣島、西表島 |
エクボサイシン | A. gelasinum | 西表島 |
モノドラカンアオイ | A. monodoriflorum | 西表島 |
ヤエヤマカンアオイ | A. yaeyamense | 西表島 |
(3)奄美種群
奄美諸島に10種がある。すべて日本産。
和名 | 学名 | 国内分布 |
---|---|---|
グスクカンアオイ | A. gusk | 奄美大島 |
トリガミネカンアオイ | A. pellucidum | 奄美大島 |
ナゼカンアオイ | A. nazeanum | 奄美大島 |
フジノカンアオイ | A. fudsinoi | 奄美大島 |
ミヤビカンアオイ | A. celsum | 奄美大島 |
アサトカンアオイ | A. tabatanum | 奄美大島 |
カケロマカンアオイ | A. trinacriforme | 奄美大島、加計呂麻島、請島 |
タニムラカンアオイ | A. leucosepalum | 徳之島 |
トクノシマカンアオイ | A. simile | 徳之島 |
ハツシマカンアオイ | A. hatsushimae | 徳之島 |
(4)オオバカンアオイ種群
鹿児島県に属する離島に5種ある。すべて日本産。
和名 | 学名 | 国内分布 |
---|---|---|
ナンゴクアオイ | A. crassum | 鹿児島県宇治群島家島 |
変種ムラクモアオイ | A. kumageanum var. satakeanum | 種子島 |
変種クワイバカンアオイ | A. kumageanum var. kumageanum | 屋久島 |
オニカンアオイ | A. yakusimense | 屋久島 |
トカラカンアオイ | A. tokarense | トカラ列島 |
オオバカンアオイ | A. lutchuense | 奄美大島、徳之島北部 |
(5)タイリンアオイ種群
中国地方~九州に7種がある。すべて日本産。
和名 | 学名 | 国内分布 |
---|---|---|
タイリンアオイ | A. asaroides | 島根県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県 |
ウンゼンカンアオイ | A. unzen | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県 |
ツクシアオイ | A. kiusianum | 九州北西部 |
マルミカンアオイ | A. subglobosum | 熊本・宮崎県境付近 |
サツマアオイ | A. satsumense | 薩摩半島 |
フクエジマカンアオイ | A. mitoanum | 長崎県福江島 |
サンコカンアオイ | A. trigynum | 甑島 |
(6)サンヨウアオイ/キンチャクアオイ
日本のサンヨウアオイ1種3変種のみよりなる。
和名 | 学名 | 国内分布 |
---|---|---|
変種サンヨウアオイ | A. hexalobum var. hexalobum | 中国、四国、九州 |
変種キンチャクアオイ | A. hexalobum var. perfectum | 四国、九州 |
変種シシキカンアオイ | A. hexalobum var. controversum | 長崎県平戸島 |
(7)サカワサイシン種群
四国、九州に3種がある。すべて日本産。
和名 | 学名 | 国内分布 |
---|---|---|
トサノアオイ | A. costatum | 高知県南東部 |
サカワサイシン | A. sakawanum | 高知、愛媛(2変種) |
オナガカンアオイ | A. minamitanianum | 宮崎県日向市付近 |
(8)ミヤコアオイ種群
関東~九州に5種がある。すべて日本産。
和名 | 学名 | 国内分布 |
---|---|---|
タマノカンアオイ | A. tamaense | 多摩丘陵とその周辺 |
ランヨウアオイ | A. blumei | 関東南西部~静岡・山梨 |
カギガタアオイ | A. curvistigma | 静岡県、山梨県 |
アマギカンアオイ | A. muramatsui | 伊豆半島とその周辺 |
変種ミヤコアオイ | A. asperum var. asperum | 近畿~島根、四国、大分、熊本 |
変種ツチグリカンアオイ | A. asperum var. geaster | 四国南東部 |
(9)カントウカンアオイ種群
東北~近畿、四国に12種がある。すべて日本産。
和名 | 学名 | 国内分布 |
---|---|---|
変種ミチノクサイシン | A. fauriei var. fauriei | 東北、新潟 |
変種ミヤマアオイ | A. fauriei var. nakaianum | 中部 |
コシノカンアオイ | A. megacalyx | 秋田南部~新潟・長野北部 |
変種アラカワカンアオイ | A. ikegamii var. fujimakii | 新潟、山形 |
変種ユキグニカンアオイ | A. ikegamii var. ikegamii | 新潟、福島 |
クロヒメカンアオイ | A. yoshikawae | 富山北部~新潟南部 |
変種カンアオイ(カントウカンアオイ) | A. nipponicum var. nipponicum | 関東~近畿(千葉~三重) |
変種ナンカイアオイ | A. nipponicum var. nankaiense | 和歌山、兵庫、四国 |
亜種オトメアオイ | A. savatieri subsp. savatieri | 神奈川箱根、伊豆半島 |
変種ズソウカンアオイ | A. savatieri subsp. pseudosavatieri var. pseudosavatieri | 神奈川丹沢、伊豆半島 |
変種イセノカンアオイ | A. savatieri subsp. pseudosavatieri var. iseanum | 三重 |
変種スズカカンアオイ | A. rigescens var. brachypodion | 静岡、愛知、岐阜、三重 |
変種アツミカンアオイ | A. rigescens var. rigescens | 三重、和歌山 |
変種モモイロカンアオイ | A. rigescens var. albescens | 徳島 |
イワタカンアオイ | A. kurosawae | 静岡、愛知 |
コトウカンアオイ | A. majale | 三重~滋賀 |
コウヤカンアオイ | A. kooyanum | 和歌山 |
スエヒロアオイ | A. dilatatum | 鈴鹿山地南部 |
ジュロウカンアオイ | A. kinoshitae | 三重県南部 |
3.Sect. Longistylis
中国および香港に23種あり、日本には分布しない。
4.Sect. Hexastylis
北米に14種あり、日本には分布しない。
文献
1)Sinn B. T., Kelly L. M., Freudenstein J. V. 2015. Phylogenetic relationships in Asarum: Effect of data partitioning and a revised classification. American Journal of Botany 102(5): 765-779.
2)Okuyama Y., Goto N., Nagano A. J., Yasugi M., Kokubugata G., Kudoh H., Qi Z., Ito T., Kakishima S., Sugawara T. 2020. Radiation history of Asian Asarum (sect. Heterotropa, Aristolochiaceae) resolved using a phylogenomic approach based on double-digested RAD-seq data. Annals of Botany 126(2): 245-260.
3)PR TIMES『【国立科学博物館】日本の植物多様性を代表するカンアオイ類ほぼ全種の進化の道筋を解明』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000083.000047048.html. 2021年8月8日閲覧.
4)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
5)Yamaji H., Nakamura T., Yokoyama J., Kondo K. 2007. A taxonomic study of Asarum sect. Asiasarum (Aristolochiaceae) in Japan. Journal of Japanese Botany 82(2):79-105.
編集履歴
2021/8/9 公開
2021/8/12 ウスバサイシン、ウンゼンカンアオイ、タイリンアオイの分布情報を修正
2025/1/26 体裁を調整